既報どおり、中国のみならずロシアとの連携強化を狙う北朝鮮は、ウクライナ戦争で多くの将兵を失ったロシア軍に対して義勇兵10万人を派遣すると勇ましい。そうした中、北朝鮮最高人民会議は、建国74周年を迎えた9月9日、もし金正恩朝鮮労働党総書記(キム・ジョンウン、38歳、2012年就任)襲撃の恐れがあると判断された場合、即時核攻撃で対抗できるようにする法整備を行ったという。
9月9日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュースは、「北朝鮮、金氏を守るため核攻撃が即時断行できるよう法整備」と題して、北朝鮮国営メディア
『朝鮮中央通信(KCNA、1946年設立)』の記事を引用して、北朝鮮最高人民会議が建国記念日の9月9日、敵対勢力による国家指導部に対する攻撃が差し迫っていると判断した場合、核兵器による攻撃が可能となるよう法整備を行ったと報じている。
『KCNA』は9月9日、北朝鮮最高人民会議が、金正恩総書記を脅かすような攻撃が感知された場合、同総書記が核兵器を使用する全ての決定権を有するとする法整備を行ったと報じた。...
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9月9日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュースは、「北朝鮮、金氏を守るため核攻撃が即時断行できるよう法整備」と題して、北朝鮮国営メディア
『朝鮮中央通信(KCNA、1946年設立)』の記事を引用して、北朝鮮最高人民会議が建国記念日の9月9日、敵対勢力による国家指導部に対する攻撃が差し迫っていると判断した場合、核兵器による攻撃が可能となるよう法整備を行ったと報じている。
『KCNA』は9月9日、北朝鮮最高人民会議が、金正恩総書記を脅かすような攻撃が感知された場合、同総書記が核兵器を使用する全ての決定権を有するとする法整備を行ったと報じた。
北朝鮮の建国記念日に当たる日に公表されたもので、戦争に至った場合に主導権掌握のため核攻撃を断行する旨宣言したものであ。
同法では更に、北朝鮮は核兵器、核物質、関連設備・技術を他国に拡散させないとしている。
なお、同総書記は9月8日、米国の脅しの下で北朝鮮が核兵器を放棄することはないと強調した上で、核保有国としての地位は揺るぎないもので、核兵器は今後如何なる交渉対象にもならないと断言している。
同日付韓国『聯合(ヨナプ)ニュース』(1980年設立の国営通信社)は、「北朝鮮最高指導者が核兵器保有継続を宣言;核兵器使用決定権付与の新法を制定」として、北朝鮮が核保有国として強硬な対応に出る恐れが益々高まったと報じている。
金総書記は、米国が非核化ではなく北朝鮮の体制崩壊を目論んでいると非難した上で、核兵器を廃棄する意向は全くないと宣言した。
9月9日付『KCNA』報道によると、今週初め、最高人民会議において核攻撃に関する新たな法整備がなされたことから、同総書記が改めて、非核化に向けた交渉を再開する意思がないことを明らかにしたという。
同総書記は更に、“米国は、北朝鮮に核兵器を放棄させ、国防を弱体化した後に、現下の指導体制を崩壊させようとしている”とも強調したとする。
今回の同総書記の一連の強気の発言は、最高人民会議において、敵対国による北朝鮮指導部への攻撃の恐れがあった場合、同総書記に“核兵器使用の全権を付与する”と定めた新法が制定したこともあってのこととみられる。
なお、『KCNA』報道によると、北朝鮮は9月8日深夜、建国74周年を祝う行事を盛大に実施しており、金総書記及び李雪主夫人(イー・ソルジュ、32歳、2009年成婚)も出席したという。
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8月17日付米
『AP通信』は、「ドネツク人民共和国トップ、北朝鮮との“相互利益”関係構築を提案」と題して、ウクライナ戦争で荒廃した東部地域の復興を行うため、親ロシア派反政府組織トップが北朝鮮作業員の派遣を要請したと報じている。
ウクライナ東部ドネツク地域の親ロシア派勢力トップが北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記(キム・ジョンウン、38歳)に宛てて、ウクライナ戦争で荒廃した同地域の復興作業促進に必要な作業員派遣を要請する書簡を送付した。
北朝鮮は先月、ウクライナ東部のドネツク人民共和国(DPR)及びルハンスク人民共和国(LPR)(注後記)を承認する世界で数少ないグループに加わっているが、その結果、ウクライナは北朝鮮との断交を決めている。
北朝鮮は、核兵器開発や弾道ミサイル発射を理由に国連から制裁を受けていて、経済困窮に喘いでいるが、この立て直しの一環で外貨獲得のために、制裁違反を承知でウクライナ東部における復興作業に労働者を派遣することを検討しているとの噂が立っている。
かかる背景もあってか、北朝鮮国営メディア『朝鮮中央通信』(KCNA、1946年設立)は8月17日、DPRのデニス・プシーリン元首(41歳、2018年就任)が8月15日に、(ウクライナ東部の復興作業のための人員派遣によって)DPR及び北朝鮮間における“相互利益をもたらす互恵関係”が構築されることを望むとしたためた書簡を送付してきたと報じた。
DPR外務省の発表によると、駐ロシアのオルガ・マキ-ワDPR大使(47歳、2022年就任)が7月29日、駐ロシア申紅哲北朝鮮大使(シン・ホンチョル、2020年就任)と会談して経済協力の協議を行ったという。
その際、申大使から、新型コロナウィルス感染問題改善に伴って国境封鎖措置が緩和された暁には、経済連携の一環で北朝鮮からの“労働者の派遣”が“大いにあり得る”と伝えられたという。
北朝鮮は、LPR側とも同様の協議を行っているとする。
本件に関し、駐北朝鮮ロシア大使のアレキサンデル・マツェゴラ(66歳)が先月中旬、ロシア国営『タス通信』(1902年設立)のインタビューに答えて、ドンバス地方の復興作業には北朝鮮の建設労働者が“非常に有益な助け”となろうと語っていた。
これに対して、米国務省のネッド・プライス報道官(39歳、2021年就任)は先月、ロシア側がウクライナ東部での復興作業に当たらせるために北朝鮮労働者を雇用するとの提案を行っていることを非難し、かかる行為は“ウクライナの主権を蔑ろにするもの”だと責め立てた。
なお、『KCNA』報道によると、金総書記宛のプシーリン元首の書簡には、8月15日の祖国解放記念日(日本統治からの解放を祝う日)への祝辞とともに、“北朝鮮人民が77年前に勝ち取ったように、ドンバス地方の人々も自由と正義を再び取り戻すべく戦っている”との記述がなされていたという。
同日付欧米『ロイター通信』は、「自称独立国ドネツク幹部、北朝鮮との“互恵関係”を構築と宣言」として、DPRと北朝鮮間の接近について報じている。
『KCNA』の8月15日報道によると、ウラジーミル・プーチン大統領(69歳)が今週初めに金総書記に宛てた書簡の中で、ロシアと北朝鮮は“包括的かつ建設的な協調関係を発展”させていくことになると言及していたという。
かかる動きを踏まえたものか、DPRのプシーリン元首が早速8月15日、金総書記に宛てた書簡の中で、祖国解放記念日への祝辞とともに、DPRと北朝鮮間の“相互利益をもたらす互恵関係”を発展させていくことを望むとのメッセージをしたためている。
『KCNA』は同元首の書簡内容を更に詳しく報じている。
なお、北朝鮮は7月、DPR及びLPRを正規の独立国として承認する旨発表している。
同声明の中で北朝鮮外交部(省に相当)は、“ウクライナは、米国が主導する不正かつ違法な活動戦略に組すると決めていることから、北朝鮮が行う(独立国承認という)正当な宣言に抗う権利は一切ない”と強調している。
(注)DPR及びLPR:2014年2月のロシアによるクリミア半島強制併合に準じて、同年4月に一方的にウクライナからの独立宣言を行った親ロシア派反政府組織。
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