北朝鮮への姿勢を転換させたトランプ政権(12月14日)
(北朝鮮への姿勢を転換させたトランプ政権)
北朝鮮が一方的に設定する年末までの非核化交渉期限まであと約2週間を残すのみとなった。北朝鮮が7日にトンチャンリ・ソヘ衛星発射場で行ったとされる実験はCSIS・戦略国際問題研究所の衛星画像解析によって、液体燃料ロケットエンジンの燃焼実験であることが明らかになった。このエンジンはICBMへの搭載を想定したものとみられる。この実験を重大視した米国・トランプ政権はこれまで北朝鮮に寛容だった姿勢を180度転換させた。...
全部読む
(北朝鮮への姿勢を転換させたトランプ政権)
北朝鮮が一方的に設定する年末までの非核化交渉期限まであと約2週間を残すのみとなった。北朝鮮が7日にトンチャンリ・ソヘ衛星発射場で行ったとされる実験はCSIS・戦略国際問題研究所の衛星画像解析によって、液体燃料ロケットエンジンの燃焼実験であることが明らかになった。このエンジンはICBMへの搭載を想定したものとみられる。この実験を重大視した米国・トランプ政権はこれまで北朝鮮に寛容だった姿勢を180度転換させた。トランプ大統領は「北朝鮮が敵対的に振舞うのであれば、失うものは非常に大きい」とツイッターで北朝鮮を厳しくけん制した。さらに米国自らが国連安保理を緊急招集し、ケリークラフト米国国連大使は「米国は北朝鮮に対し柔軟に同時並行的な対応を行う用意がある」と逃げ道を残しつつも、「北朝鮮の一連の行動は明確な安保理決議違反である」と断定し、「さらなる深刻な挑発行為を行った場合には(安保理として)相応の行動をとる用意がある」と北朝鮮をけん制した。こうした中、米国はバンデンバーグ空軍基地で地上発射型の中距離弾道ミサイルの発射実験を行った。中国やロシアを想定したものと言われているが、タイミング的には北朝鮮に対するけん制もあるとみられる。エスパー国防長官は欧州やアジアの同盟国と緊密に協議していくことを検討しているとしており日本を含むアジアへの配備も視野に入っている模様である。北朝鮮はICBMエンジンのための燃焼実験というレッドラインを踏み越えた行為に足を踏み入れてしまった。そのためトランプ大統領としては来年の大統領選挙に向けて強い姿勢を示す必要が出てきたというのが今回の米国の方針転換の背景にあるとみられる。
(今後の北朝鮮の動きは?)
北朝鮮の対米強硬派・金英哲氏は「我々はこれ以上失うものは何もない」とトランプ大統領のツイッターに反論した。また北朝鮮外務省報道官は国連安保理での米国クラフト国連大使の発言に対し「米国の対応がわれわれがどの道を選ぶべきか明確な決心を下す上での決定的なきっかけとなった」との意味深な発言を行った。だが、まだ非核化協議はまだ破綻していない。今はその一歩手前にあり、まだ関係改善の余地は残されている。米朝協議がなくなれば体制の安全の保証や対北制裁解除など交渉で求めてきた見返りは一切得られなくなるどころか北朝鮮は再び米国の軍事的圧力にさらされることになる。北朝鮮が挑発を続ければ選挙を控えるトランプ大統領も見過ごすわけにはいいかなくなる。米国が北朝鮮の非核化交渉期限に何のアクションもとらず年を越した場合には、面子がつぶれた北朝鮮は1月の年頭演説の直後、もしくは金正恩委員長の誕生日である1月8日あたりに人工衛星を儀装したICBMの発射実験を行うことも考えられる。一部の報道では北朝鮮の在チェコ大使と在オーストリア大使を30年にも及ぶ職務から解き11月末に北朝鮮翻刻に帰国させたなどの動きも気になるところであり、年末から年頭にかけて朝鮮半島から一歩も目を離せない状況が続く。
閉じる
豊渓里実験場に車輪の跡(12月14日)
12月8日に北朝鮮は「重大な実験」を行ったと発表したが、米国の商業衛星は、昨年北朝鮮が廃棄したとされている豊渓里の実験場で車輪の跡を発見した。
米国の北朝鮮の分析機関である「38North」が12月11日に伝えたもので、「豊渓里の核実験場に自動車と人間が通った痕跡があった」「核実験場の封鎖されたトンネルには活動の痕跡は認められなかったが、11月18日と12月7日の衛星写真には、雪が積もっている道路に自動車と人が通った痕跡があった」と発表している。...
全部読む
12月8日に北朝鮮は「重大な実験」を行ったと発表したが、米国の商業衛星は、昨年北朝鮮が廃棄したとされている豊渓里の実験場で車輪の跡を発見した。
米国の北朝鮮の分析機関である「38North」が12月11日に伝えたもので、「豊渓里の核実験場に自動車と人間が通った痕跡があった」「核実験場の封鎖されたトンネルには活動の痕跡は認められなかったが、11月18日と12月7日の衛星写真には、雪が積もっている道路に自動車と人が通った痕跡があった」と発表している。
38Northは「現在のところ核実験場が活動を再開したか否かを判断することはできないが、北朝鮮が今年の3月と同様に、人員を核実験場に配置していることは説明可能だ」としている。閉鎖されたトンネルの周囲に僅かな痕跡はあるが、まだ建物が再建された様子はないという。これに関し、韓国の当局者は数週間か数か月で核実験場の再建は可能だろう、とみている。
2018年4月に、北朝鮮は4月21日より核実験の中止と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射の中止を決め、5月24日には、中米露など10か国の海外メディアの前で、核実験場を爆破していた。ただしIAEAなどの専門家の立ち合いは認めなかったので、核の製造にどの程度のダメージを与える爆破であったのかはわからないままであった。
北朝鮮が12月下旬には中央委員会総会を開催し、「重大な問題を討議し、決定する」としていることからしても、ICBMの発射や核実験が再開される可能性は高いと見られる。
閉じる
国連安保理、北朝鮮の核ミサイル問題公開討論~北朝鮮外務省は、米国の挑発には徹底抗戦~(12月13日)
現地時間12月11日、国連の安全保障理事会は、米国の要請により、北朝鮮の核ミサイル問題についての公開討論を行った。
これに対し、北朝鮮の外務省の報道官は12日、米国の要請で朝鮮の核ミサイル問題について公開討論を開催したことを非難するとともに、「米国の愚かな行為は、我々がどの道を選ぶかを決める上で決定的な役割を果たした」と述べ、強硬路線に進むことを示唆した。さらに北朝鮮の自衛的な措置について言いがかりをつけたとも非難している。...
全部読む
現地時間12月11日、国連の安全保障理事会は、米国の要請により、北朝鮮の核ミサイル問題についての公開討論を行った。
これに対し、北朝鮮の外務省の報道官は12日、米国の要請で朝鮮の核ミサイル問題について公開討論を開催したことを非難するとともに、「米国の愚かな行為は、我々がどの道を選ぶかを決める上で決定的な役割を果たした」と述べ、強硬路線に進むことを示唆した。さらに北朝鮮の自衛的な措置について言いがかりをつけたとも非難している。
また報道官は、年末の期限が近づくにつれて、米国は朝鮮に対する圧力を強めているとして、米国を非難し、米国がこのような討論会という形で、朝鮮に対し「相応な回答」を行ったことに対し、朝鮮はもはや失うものはないので、米国と徹底抗戦する準備ができている、とも述べている。
北朝鮮は先週「(北朝鮮からの)クリスマスプレゼントが何になるかは米国次第だ」と発言したのに続き、7日にはミサイルエンジンの燃焼実験を行い、ICBM発射実験の再開を示唆する動きにでていた。一連の北朝鮮の行動に対し、米国が安保理の会合を主導することで圧力をかけたものと思われる。
これまでトランプ大統領は北朝鮮のミサイル等の飛翔体の発射実験に対し、「短距離ミサイルならば問題ない」としていた。しかし今回米国主導で、北朝鮮の核ミサイル問題を国連安保理で話し合ったことに対し、北朝鮮が強烈な不満を示したもの。
閉じる
三池淵郡を市に(12月12日)
朝鮮中央通信が11日伝えたところによると、10日朝鮮最高人民会議常任委員会は、両江道三池淵郡を三池淵市にするとの政令を発布した。
三池淵郡は北朝鮮の故金正日総書記の故郷であり、近年金正恩委員長が度々視察を行い、現代的な都市モデルを建設するようにとの現地指導を行っていたもの。
米国は北朝鮮を刺激する発言をやめよ(12月10日)
8日にトランプ大統領が「米国に敵意を示したら、北朝鮮は総てを失うことになる」とツィートしたことに対し、北朝鮮はすぐさま反応した。
9日、朝鮮労働党の李洙墉副委員長は「トランプの発言は誰かを威嚇しているように見えるが、実際は自分がおびえていることははっきりしている」「米国はひどい災難に見舞われたくないと思うのならば、良く考えて、朝鮮を刺激するような言論は控えるべきだ」との警告を発した。
また朝鮮中央通信は、9日、アジア太平洋平和委員会の金英哲委員長が、「米国が言葉で朝鮮を威嚇できると考えているのであれば、智慧が足りない。...
全部読む
8日にトランプ大統領が「米国に敵意を示したら、北朝鮮は総てを失うことになる」とツィートしたことに対し、北朝鮮はすぐさま反応した。
9日、朝鮮労働党の李洙墉副委員長は「トランプの発言は誰かを威嚇しているように見えるが、実際は自分がおびえていることははっきりしている」「米国はひどい災難に見舞われたくないと思うのならば、良く考えて、朝鮮を刺激するような言論は控えるべきだ」との警告を発した。
また朝鮮中央通信は、9日、アジア太平洋平和委員会の金英哲委員長が、「米国が言葉で朝鮮を威嚇できると考えているのであれば、智慧が足りない。年末の期限を前に、熟慮して、決断すべきだ。現在のように虚勢をはって、言語による威嚇をし、時間を引き延ばすことをやめるべきだ」と述べたことを伝えた。
トランプ大統領としては、大統領選挙戦に向けて北朝鮮との交渉が続いている「フリ」をしていこうとしていたわけであるが、その思惑は崩れつつある。一方の北朝鮮としても、トランプ大統領が「外交上の成果」として誇っている北朝鮮問題を反故にしないだろうという思いから、年末までと期限を区切り、米国が早く交渉の場にでてくるようにミサイル実験などをして、米国から妥協を引き出そうとしていた。お互いに相手の出方を見誤っていたことになるが、非難合戦をしていることは、まだ交渉の余地は残っているというシグナルを出し合っていることにもなる。
閉じる
「北朝鮮を追う」内の検索