中国は、米国との大国争いに躍起になっていて、軍事力や経済力はもとより、他国への経済支援額やワクチン提供回数等までも自国が優っていると主張している。そうした中、今度は東京オリンピックで獲得した金メダル数についても、自国の領土である香港・台湾が獲得した金メダルを加えれば米国を上回るとアピールしている。
8月14日付
『Foxニュース』:「中国、香港・台湾分を含めれば米国を抜いて金メダル最多獲得国だとアピール」
東京オリンピックにおいて、米国はメダル獲得総数に加えて金メダル数も参加国最多となっている。
しかし、中国国営メディアがこの程、中国こそが金メダル最多獲得国だと言い出した。
『中国中央テレビ』及び「微博(Weibo、2009年立ち上げのミニブログサイト)」が今週ツイートしたところによれば、自国の領土である香港及び台湾が獲得したメダルを加えれば、それぞれ金41、銀37、銅27、合計106個となるとする。...
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8月14日付
『Foxニュース』:「中国、香港・台湾分を含めれば米国を抜いて金メダル最多獲得国だとアピール」
東京オリンピックにおいて、米国はメダル獲得総数に加えて金メダル数も参加国最多となっている。
しかし、中国国営メディアがこの程、中国こそが金メダル最多獲得国だと言い出した。
『中国中央テレビ』及び「微博(Weibo、2009年立ち上げのミニブログサイト)」が今週ツイートしたところによれば、自国の領土である香港及び台湾が獲得したメダルを加えれば、それぞれ金41、銀37、銅27、合計106個となるとする。
因みに、米国の獲得数は金39、銀41、銅33、合計113個で、中国の正式な記録では金38、銀32、銅18、合計88個となっている。
しかし、国際オリンピック委員会(IOC)の正規記録上では、香港及び台湾(IOC登録上はチャイニーズタイペイ)は個別のオリンピック委員会をベースに参加しており、中国のそれとは区別されている。
なお、『台湾日報(1949年創刊の英字紙)』によれば、別の記事では、中国が、マカオ特別行政区の獲得分も含めて、合計42個の金メダルを獲得したと主張しているという。
一方、中国政府は、東京オリンピックを通して西側メディアに対して複数回攻撃している。
例えば、在ニューヨーク中国総領事館は米『NBC』に対して、開会式で中国チームが入場した際に、同メディアが台湾及び南シナ海の諸島を含めていない地図を画面に表示したとして、“中国国民の尊厳と感情を傷つけた”と非難する声明を発表している。
同総領事館は、“オリンピックの機会を狙って政治的「策略」を仕掛けたり、真意を隠して自己宣伝しようとも、成功するはずがない”とも言及している。
また、在スリランカ中国大使館が『ロイター通信』に対して、同メディアが重量挙げ49㎏級金メダリストの侯志慧選手(ホー・チーフイ、24歳、注後記)の“醜い”写真をわざと掲載したとして、“政治的かつイデオロギー”に根差した悪意ある報道だと非難している。
(注)侯志慧選手:インドメディア『ANI』(1971年開局)が7月26日、同選手のドーピング有無について国際検査機関(ITA、2018年設立の非営利団体)が調査しており、もし世界反ドーピング機関(WADA、1999年設立)が疑義ありと認めれば、同選手の金メダルが没収され、2位のインド人ミラバイ・チャヌー選手(27歳)が繰り上げ優勝となると報道。しかし、中国側からの非難はもとより、WADA自身がかかる事態を否定したことから、『ANI』が7月30日に誤報として訂正報道をするという事態が発生していた。
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既報どおり、習近平国家主席(シー・チンピン、68歳)は、宇宙開発先行の米国を追い抜いて「宇宙強国」になると宣言している。そうした中、宇宙開発事業トップの共産党高官が著名中国人科学者を殴打するという醜聞が起こっていたことが、事件発生から1ヵ月経って公になった。中国自前の宇宙ステーションへの宇宙飛行士送り込み成功という快挙を遂げていたこともさることながら、中国共産党創立100周年祝賀行事が控えていることもあって、またしても中国上層部が余計な醜聞は隠蔽しようとしていたことが窺える。
7月5日付米
『CNNニュース』:「中国人宇宙飛行士による初の船外活動という吉報の中、著名科学者が殴打されるという醜聞が発覚」
中国国営の宇宙開発事業会社、中国航天科技集団公司(CASC、1999年設立)は、中国独自の宇宙ステーションに送り込まれた宇宙飛行士が、初めて船外活動を行ったとの快挙が大々的に報道される中、CASC子会社トップが1ヵ月前、部下の著名科学者2人を殴打する醜聞を起こしていたことがこの程発覚し、窮地に追い込まれている。
当該殴打事件は6月初めに発生していたが、国営メディア『チャイナ・ニューズ・ウィークリィ』誌(1999年創刊)が7月3日に報じたことで白日の下にさらされた。
中国共産党上層部は、西側諸国に対抗していく上で、科学技術開発が“重要な戦場”となると何度も表明してきた。
更に、習近平国家主席自身も、トップ科学者らを“中国の宝であり、中国人民の誇りであり栄誉”だと称賛している。
しかし、裏では中国人科学者が無謀な共産党の高官によって虐げられている実態が浮き彫りになった。
同メディア報道によると、共産党書記(高官)でCASC子会社の中国航天投資有限公司(2006年設立)会長である張陶(チャン・タオ)が、自身を国際宇宙航行アカデミー(IAA、注後記)の会員に推薦するよう、IAA正会員の2人の科学者に要求したところ、いずれも拒否されたことに立腹して殴打したという。
被害に遭ったのは、呉美容氏(ウー・メイロン、85歳)及び王近年氏(ワン・チーニアン、55歳)で、前者は背骨の骨折、後者は数本の肋骨骨折並びに全身打撲のために1ヵ月余り入院を余儀なくされている。
ところが、事件発生後でも、張陶会長は“通常勤務”を続けていたという。
この報道を受けて、中国版ツイッター微博(ウェイボー、2009年運営開始)のユーザーがCASCの事態隠蔽を責めるコメントを投稿し、リツイートやフォロワー含めて1億3千万人が視聴した。
そこで止む無くCASCは7月4日午後、事態を簡単に伝える声明文を発表した。
ただ、その声明文では、張陶会長が“酩酊後”に行為に及んだこと、同会長を職務停止処分にしたこと、更に、調査チームを同子会社に派遣したことに言及するだけで、事件の詳細や、何故1ヵ月余りも内分にされてきたのかについて一切明らかにされていない。
隠蔽疑惑とされる背景には、殴打事件の1週間後に、中国人宇宙飛行士が初めて自前の宇宙ステーションに送られるという快挙を成し遂げていたこと、更に、7月1日には中国共産党創立100周年の記念祝賀式典が控えている、という事情があったためと窺える。
習指導体制の下、汚職撲滅運動を展開して数百万人の役人が罰せられたが、今回の張陶会長による科学者殴打事件を契機に、実際には中国人科学者等の知識人が、過去どれ程共産党員らに虐げられてきたかという事実を浮き彫りしている。
例えば、1957年、毛沢東初代国家主席(マオ・ツォートン、1893~1976年)が、反右派闘争の名の下、数十万人の知識人を迫害した。
また、1966~1976年まで続いた、文化大革命と呼ばれた毛沢東による奪権運動・政治闘争の中で、紅衛兵(学生や工場労働者の集合体)によって、多くの作家・学者・科学者らが標的にされた。
文化大革命の犠牲者としては、著名なミサイル技師だった姚桐斌(ヤオ・トンビン、1922~1968年)が、自宅近くで紅衛兵によって殴り殺されている。
更に、中国人工衛星の父と呼ばれた宇宙科学者の趙九章(チャオ・チンチャン、1907~1968年)は自殺に追い込まれている。
微博に投稿されたコメントの中で特に目を引くのは、“張陶事件で明らかになった事実は、法律を正しく施行することが、人工衛星を宇宙に飛ばすことより如何に困難であることかが判明したことである”という指摘である。
(注)IAA:1960年8月、スウェーデンのストックホルムで開かれた第11回国際宇宙航行会議において創立された、宇宙関連の学者らで構成される国際アカデミー。基礎科学、工学、生命科学、および社会科学という4つの部門に、世界72カ国から正会員・準会員が1195名(アクティブ)、名誉会員が5名所属。公式サイトに掲げられた目的は、平和目的の宇宙航行活動の発展、宇宙航行に関わる科学技術分野において顕著な貢献をした個人の顕彰、会員が貢献できる国際共同プログラムの提供、及び航空宇宙科学の進展における協力、である。
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