米メディア;安倍前首相を踏襲するだけで大衆受け狙いの菅新首相に長期政権期待は疑わしいと報道(2020/10/18)
菅義偉新首相(71歳)は、安倍晋三前首相(66歳)の政策を踏襲すると標榜している。それに倣えば、初外遊は米国に向かいたいところだろうが、来月早々に米大統領選を控えていること、また、どちらが勝利を収めるか不確定なところから、訪米は諦めて、もうひとつのレガシーである「自由で開かれたインド太平洋構想(FOIP)」具現化を目指して、東南アジア諸国連合(ASEAN)の雄、かつ、南シナ海領有権問題で中国と対峙しているベトナムとインドネシアを最初の訪問先に選んだ。今後の手腕が期待されるところだが、米メディアは、ご祝儀相場で高支持率を得ていても、大衆迎合の小さな独自政策しか打ち出せていないとして、長期政権を期待するのは難しいと報道している。なお、政権基盤がぜい弱であった安倍第一次政権(2006~2007年)も、初めて政権奪取した鳩山由紀夫民主党政権(73歳、2009~2010年)も、就任早々の支持率が高かった割に短命で終わっている。
10月17日付
『AP通信』:「大衆に訴える実利主義の菅新首相、安倍前首相の構想を追随」
菅義偉新首相は10月18日、初の外遊先であるベトナムとインドネシアに向け出発する。
同新首相がこの2ヵ国を最初の訪問先として選択したのは、中国による影響力への対抗、及びアジア地域の国々との経済連携強化という、安倍晋三前首相が標榜していた構想を追随するという考えがあると言える。
そして、安倍氏の方針をなぞるかのように、ベトナムとの国防装備品・技術移転協定を成立させることで、日本製武器の輸出拡大を促進していくことが期待されている。...
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10月17日付
『AP通信』:「大衆に訴える実利主義の菅新首相、安倍前首相の構想を追随」
菅義偉新首相は10月18日、初の外遊先であるベトナムとインドネシアに向け出発する。
同新首相がこの2ヵ国を最初の訪問先として選択したのは、中国による影響力への対抗、及びアジア地域の国々との経済連携強化という、安倍晋三前首相が標榜していた構想を追随するという考えがあると言える。
そして、安倍氏の方針をなぞるかのように、ベトナムとの国防装備品・技術移転協定を成立させることで、日本製武器の輸出拡大を促進していくことが期待されている。
ただ、同前首相が注力していた日米関係については、目下大統領選を控えた米国は国内問題で手一杯であり、かつ新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行問題の改善見通しが立っていないことから、訪米は見送らざるを得なかった。
8年近くに及ぶ安倍政権にあって、安倍氏が外交で飛び回っていた間、菅氏は官房長官として主に内政に注力してきた。
菅首相は就任1ヵ月を迎えた10月16日、“必要と思ったことは躊躇することなく、可及的速やかに取り組んでいく意向で、可能と思われる事項から着手していく”とし、“かかることから、改善がなされていることに国民に気付いてもらえればと思う”と記者団に語った。
この考えの下、まず同首相は、日本の旧態依然の“ハンコ文化”を変革すること、また、前職時代からも掲げていた携帯電話料金の値下げ、官民挙げての業務オンライン化について、早急に成果を出すよう担当大臣に求めている。
更に、少子化に伴う人口減少問題に取り組む一環で、不妊治療の保険適用化も進めていくとしている。
東京工業大学の社会学者西田亮介准教授(37歳)は、“菅首相は、目下の高支持率維持のため、国民の目に留まりやすい政策から実行して行こうとしている”とし、“ひとつひとつ目に見える改革をしていくことで、現政権が成果を上げていることを知らしめていくという戦略だ”と分析している。
しかし、一方で菅首相は、日本学術会議会員の任命に当たり、これまでの慣例を無視して、同会議推薦の105名のうち6名の任命を拒否している。
これによって、同首相が異議等唱える人を黙らせようとしているとか、学問の自由に悪影響を与える行為だ等、非難の声が上がっている。
歴史学者の保阪正康氏(80歳)は、『毎日新聞』の記事上で、同首相の行為を“粛清”だと断罪している。
今回の任命拒否で、同首相に危機をもたらすことはないとみられるものの、就任当時の支持率60%超だったものが、先週では50%台に落ちている。
また、同首相が直接指示したものではないかも知れないが、文部科学省が全国の学校に対し、10月17日に行われる故中曽根康弘元首相(1918~2019年)の国葬に当たって、国旗掲揚や鯨幕(黒白縦縞の幕)を張る等で弔意を示すよう通達を出していることが判明し、学問の自由の侵害との声が上がっている。
更に、安倍前首相に倣うということで、菅首相が10月17日、靖国神社の例大祭に合わせて供物を奉納している。
同神社については、第二次大戦のA級戦犯が祀られていることから、中国や韓国が軍国主義の象徴だとして絶えず非難の声を上げてきている。
そこで西田准教授は、“菅首相はイデオロギーも政治的構想も持たない政治家とみられていることから、全てが選挙のための行動とみられてしまいがちだ”とした上で、“中長期的な政策目標を明確に示せないことが命取りとなりかねない”と評価している。
また、安倍氏批評家と知られる上智大学国際教養学部の中野晃一教授(50歳)は、無派閥の菅首相として、派閥の領袖に配慮した閣僚人事を行い、与党内から反発されないよう気を配っているが、間もなく党内の支持を失う恐れがあると分析している。
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日本のスポンサーは大坂なおみ選手の全米オープン優勝を絶賛するも、人種差別問題アピールには微妙な反応【米・フランスメディア】(2020/09/15)
テニスの大坂なおみ選手の全米オープン制覇に、日本中でも称賛の嵐が巻き起こっている。彼女のスポンサーも当然絶賛しているが、しかし、彼女のBlack-Lives-Matter運動に関わる問題提起のアピールには微妙な反応をしている。
9月14日付米
『AP通信』:「日本も大坂選手の勝利を絶賛するも、スポンサーは彼女の人種問題アピールに微妙な反応」
日本中が大坂なおみ選手の全米オープン制覇を讃えていて、特に彼女の数多のスポンサーも絶賛している。
しかし、日本でしばしばみられるとおり、彼女が米国での人種差別問題について試合会場でアピールしている姿には沈黙している。
何故なら、米国と違って、日本には移民がとても少なく、従って人種差別問題についても身近な問題として気付く機会がそう多くはないからである。...
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9月14日付米
『AP通信』:「日本も大坂選手の勝利を絶賛するも、スポンサーは彼女の人種問題アピールに微妙な反応」
日本中が大坂なおみ選手の全米オープン制覇を讃えていて、特に彼女の数多のスポンサーも絶賛している。
しかし、日本でしばしばみられるとおり、彼女が米国での人種差別問題について試合会場でアピールしている姿には沈黙している。
何故なら、米国と違って、日本には移民がとても少なく、従って人種差別問題についても身近な問題として気付く機会がそう多くはないからである。
大坂選手は、来年開催の東京オリンピックで日本代表として出場することを希望しており、多くのアスリートが欲しているように、試合会場でBlack-Lives-Matter問題をアピールしたいと考えているかも知れない。
ただ、国際オリンピック委員会(IOC)はオリンピック憲章第50条に則り、表彰式において“政治的、宗教的、人種問題に関わるプロパガンダ等の行動を禁止”している。
多くのアスリートが、来年の東京大会での行動を擁護するよう求めており、いくつかの団体は、“人種差別反対”の表明は政治的活動に当たらないとするようIOC側に要求している。
しかし、日本のスポンサーは、人種差別問題アピール行動には慎重な対応を見せている。
シチズン時計は、大坂選手が黒人犠牲者の名を刻した黒色マスクを着用していたことには一切触れず、ただ、同選手が試合中に“大坂なおみウォッチ”を常に着けていてくれて喜んでいるとのみコメントした。
大坂選手が使用するラケットを提供しているヨネックスはもう少し突っ込んで、“スポーツには国境も人種差別もない。従って、スポーツに関わる全ての人が純粋にスポーツを楽しんでもらうことを望む”とした上で、“大坂選手の活動は当社の理念を表してくれており、当社としては彼女の行動に敬意を払う”と表明している。
一方、インスタント麺メーカーの日清フーズは、同社のスローガンである“勝つにはハングリーが必要”を体現してくれたと称賛するも、人種差別問題アピールについては、“彼女の個人的なこと”としてコメントすることを控えた。
更に、日産自動車も、コメントする意向はないと表明している。
残念ながら日本では、何か行動を起こした人々に対して否定的な動きが噴出することはよくあることである。
何故なら、協調やチームワークが最善とされる文化があることから、個人主義がしばしば利己的とか見苦しい等と批判されがちであるからである。
なお、首相事務所からのコメントも、人種差別問題アピールについて一切言及はなく、ただ、“逆転勝利おめでとう! 諦めない精神の重要性を改めて教えてもらい感謝する”とのみであった。
一方、9月13日付『AFP通信』:「大坂なおみ選手優勝並びに人種差別問題アピールについて日本も絶賛」
日本のメディアも大坂選手のファンも、挙って同選手の優勝だけでなく、人種差別問題アピールについて絶賛した。
『毎日新聞』は、“四大大会3度目の優勝は、犠牲となった黒人の遺族が心から望むこと-悲惨な事態が二度と起こらないこと及び社会が変わること-を正に体現したものだ”と報じた。
しかし、同紙は、同選手のスポンサーからの入り混じった反応にも言及している。
その一部として同紙は、あるスポンサーの関係筋の話として、“彼女が試合を運ぶ上でこのような行動を起こすことが必要であったとは思えず、むしろもっと練習に励んで強くなって欲しい”とのコメントを掲載している。
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