インドで最貧層の5億人を対象とする世界最大の健康保険制度が始動(2018/09/25)
インドのモディ首相は23日、同国の最貧層の5億人を対象に、保険料が無料の世界最大の健康保険制度「モディケア」を立ち上げた。インドでは来年総選挙が予定されており、2期目を目指す首相にとって、本制度の始動は最重要政策の1つである。
本制度は今年初めに連邦予算の中で発表されたが、インドの人口12億5,000万人の40%に当たる最貧層を対象としている。最低所得の1億世帯が、重病の治療を受ける場合に、健保から50万ルピー(約78万円)の医療費を支給されるが、同国ではかなりの高額となる。制度運用のために、中央政府と29の州政府が、毎年合計約16億ドル(約1,800億円)を負担することが見込まれており、予算は需要に応じ段階的に増額されていく。...
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本制度は今年初めに連邦予算の中で発表されたが、インドの人口12億5,000万人の40%に当たる最貧層を対象としている。最低所得の1億世帯が、重病の治療を受ける場合に、健保から50万ルピー(約78万円)の医療費を支給されるが、同国ではかなりの高額となる。制度運用のために、中央政府と29の州政府が、毎年合計約16億ドル(約1,800億円)を負担することが見込まれており、予算は需要に応じ段階的に増額されていく。
モディ首相は、東部のジャールカンド州の州都ラーンチーで行われた制度発足の式典で保険証を手渡し、インドにとって歴史的な日になったと強調した。首相はツイッターに、貧困層の人々に心を寄せ、その健康のために力を尽くしていきたい旨の投稿を行った。
インドは公的医療制度に国内総生産(GDP)の1%しか投じておらず、その割合は世界でも最低水準だ。制度には過度の負担がかかっており、施設と医師の不足が慢性化している。殆どの人は経済的に可能であれば、民間の診療所や病院を利用しているが、診察料は1,000ルピー(約1,550円)かかることもあり、毎日の生活費が2ドル(約255円)未満の数百万人の人々にとって、これは大金である。
インド政府は、平均的な世帯の支出額の60%超が、医薬品代や治療費などに使われていると見積もっている。また最貧層の多くは、医療サービスを一切利用していないという。英医学誌ランセットに今月公表された報告書によると、インドでは低水準の医療による死亡者数が毎年160万人に上ると推定されており、世界で最多となっている。
モディ首相は、貧困層支援策を基盤に、来年5月の総選挙で勝利して2期目の当選を目指しており、「モディケア」はその主要政策である。野党などの批判勢力は、そうした巨大なセイフティーネットに投入する財源の確保について疑問を投げかけており、総選挙に向けた急場の人気取りに過ぎないと指摘する声も上がっている。
野党・国民会議派のサンジャイ・ニルパム議員は、「これは新たな詐欺だ。国民は後に選挙の宣伝だけの政策に過ぎないと気づくだろう。」と厳しく批判した。
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米、母乳育児を支持する国際決議に反対(2018/07/09)
【9日付
『フォーチュン』『ニューヨークタイムズ』など】 今春ジュネーブで開かれた国連世界保健総会(WHA)で、母乳を支持する決議案をめぐり米国が他国と対立していたと「ニューヨークタイムズ」が8日、報じた。
決議案は、母親の母乳が過去数十年間にわたる研究で子供にとって最も体に良いことが示されているため、母乳代替品の誤ったマーケティングを制限すべきという内容であった。容易に可決されると予想されたが、米国代表団は粉ミルクメーカーと連携し、「母乳育児を保護、促進、支援する」ことを推奨する文言を決議案から削除しようとした。
しかし交渉がうまくいかず、「ニューヨークタイムズ」紙によると、米国代表団は脅しにかかった。...
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決議案は、母親の母乳が過去数十年間にわたる研究で子供にとって最も体に良いことが示されているため、母乳代替品の誤ったマーケティングを制限すべきという内容であった。容易に可決されると予想されたが、米国代表団は粉ミルクメーカーと連携し、「母乳育児を保護、促進、支援する」ことを推奨する文言を決議案から削除しようとした。
しかし交渉がうまくいかず、「ニューヨークタイムズ」紙によると、米国代表団は脅しにかかった。決議案を発表する予定のエクアドルに、提案を破棄しなければ、米国は貿易措置でエクアドルを罰すると伝えたという。エクアドル代表団は屈し、WHAは他に決議案を提案する国を見つけなければならなくなった。
「ニューヨークタイムズ」紙によれば、多くの代表団は米国からの報復を恐れて匿名だったものの、米国が取った行動が事実であることを認めた。
「米国は世界を人質に取り、健康を守る最善の方法について40年近く続いてきた合意を覆そうとしている。まるで脅迫に等しい。」と英国の擁護団体のベビーミルク・アクションの政策部長のパティ・ランダル氏は語った。
またエクアドルの政府当局者は、貿易措置の脅迫に加えて、米国は隣接するコロンビアのゲリラが問題となっている北部エクアドルへの軍事支援を撤回すると脅したという。エクアドル当局者は、「授乳といった些細なことがこれほどまでの反応を引き起こすとは思っていなかったため、ショックを受けた」と匿名で明かした。
他国は米国の報復を恐れ、決議案の提案から身を引いたが、最終的には2日間の交渉の末、ロシア代表団が決議案の提案を申し出、米国もこれに反対しなかった。
「英雄になろうとはしたわけではなく、特に世界の他の国にとって本当に重要な問題について、大国が、いくつかの小さな国々をいじめることは間違っていると感じている。」とロシア代表団は、決議を支持する判断が道徳的な信条の問題であったと語った。
最終的な決議文は、米国の反対にもかかわらず当初の文言を多く含んでいた。世界保健機関(WHO)が加盟国に「乳幼児の食糧の不適切な促進」を中止するよう呼びかける箇所は削除された。
医学雑誌「ランセット」に2016年に掲載された研究によると、母乳育児は毎年823,000人の乳幼児と2万人の母親の命を救うことができる。さらに、世界的にみれば母乳授乳は、医療費削減など3,000億ドルの節約につながる。
「ニューヨークタイムズ」紙によれば、ベビーフード市場は年間700億ドル規模の産業である。
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