新型コロナウィルス(COVID-19)ワクチンについては、依然日本他の一部で“ワクチンの弊害”や“陰謀説”を唱える輩がいる。そうした中、英国の研究グループが、COVID-19ワクチン接種が始まった2020年12月からの1年間で、世界でおよそ2千万人の命が救われたとする研究結果を発表した。
6月23日付
『AP通信』は、「英国の科学者グループ、COVID-19ワクチンが初年度で2千万人の死者数減少に貢献と発表」と題して、ワクチンによる成果を明らかにする一方、世界保健機関(WHO)等が主体で進められた途上国向けワクチン配布プロジェクトが計画どおり進んでいたら、もっと救命できたはずだと非難している旨報じている。
英国の研究グループは6月23日、COVID-19ワクチン接種開始の1年間で、世界の1,980万人の命が救われたとする研究結果を公表した。
インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL、1907年設立の理工系公立大学)のオリバー・ワトソン博士率いるグループが、英国『ランセット』(1823年創刊の査読制医学雑誌)で発表したもので、2020年12月初めに英国で初めて同ワクチン接種が開始されて以来、世界中で43億人の人たちがワクチン接種を受けた結果を踏まえて、その成果を調査したものである。
同博士は、“もしワクチン開発・接種が行われていなかったなら、どれだけ多くの人が犠牲となっていたかを明らかにするための研究である”と述べている。
世界185ヵ国におけるデータを基に行われた研究結果によると、インドで420万人、米国で190万人、ブラジルで100万人、フランスで63万1千人、英国で50万7千人の人命が救われた計算になるとする。
ただ、ICL研究グループは、COVID-19発生源とされる中国については、人口過多の割に感染症に関わる犠牲者情報の不確実性が高いという理由で、上記研究対象から除外している。
また、調査の限界として、ワクチンが開発・接種されていなかった場合にCOVID-19がどう突然変異したのかとか、都市封鎖措置やマスク着用がどれだけ成果を上げたかについて研究対象となっていないことが挙げられる。
一方、ICL研究グループは、WHO主導で進められていた途上国向けのワクチン配布プロジェクトが、2021年末までに40%達成するとの計画値が実現されておれば、更に60万人の人の命が救えたはずだ、とも言及している。
これに対して、同研究とは別のグループによる調査では、ワクチン効果による人命救助は1,630万人と推定されるという結果も出ている。
シアトル在の保健指標評価研究所(2007年設立)が行ったもので、アリ・メクダッド教授(61歳)は、“COVID-19ワクチンが多くの人の命を救ったとの研究結果に同意するが、救えたとされる人数には同意できない”とコメントした。
何故なら、(研究対象とされていない)マスク着用を非常に多くの人がすぐに実行したことや、ワクチン開発・接種開始前にデルタ株変異ウィルスが蔓延し始めていたという事実があるからだとする。
更に、英国西部のブリストル医学校(1893年創立)のアダム・フィン教授は、ICL研究によって、ワクチン開発・接種キャンペーンの成果及び欠点も明らかにされたとコメントした。
同教授は、“今回のワクチン開発・配布はとてもうまくいったと思うが、今回の研究成果が示すとおり、世界への配布プロジェクトを更に改善することで、将来の同様の感染症対策にもっと活かされる必要がある”とも付言している。
同日付『ニュー・アトラス』(2002年設立の理科学系オンラインニュース)は、「COVID-19ワクチンで昨年2千万人近くの人命が救われたとの研究結果発表」と題して、ICL研究グループの研究報告について更に詳しく報じている。
ICLが『ランセット』誌に掲載した研究成果によると、COVID-19ワクチンのお陰で2021年に世界中で2千万人近くの人の命が救われた一方、ワクチン配布プロジェクトがもっと成果を上げれば、更に多くの人命が救われたはずだという。
ICL研究グループによると、COVID-19ワクチンがなかった場合の世界の犠牲者数は3,140万人に上ったと推定されるが、実際には、COVID-19関連死と公式に報告されていない犠牲者も含めて1,160万人が亡くなっているので、その差1,980万人の人命が救われたとの計算になるという。
救われたとされる人のうち、約80%は、COVID-19による重症化や入院加療の患者であり、残りの20%(400万人)は感染が防げた人であるという。
なお、ICLによる研究を率いたワトソン博士は、ワクチン配布プロジェクト(COVAXイニシャティブ)の失敗について厳しく批判している。
何故なら、“ワクチンを可及的速やかに世界に配布することが、パンデミック(世界流行)を抑える重要な施策であるにも拘らず、今回は十分な成果を達成できなかったからだ”という。
同博士は更に、ICL研究の結果、“COVAXイニシャティブが目標にした、2021年までに途上国の40%の人々にワクチン接種実施という計画が達成されていれば、5人に1人、60万人に近い人の命が救われたと推定される”と強調している。
従って、同博士は、“将来の新感染症に対応するため、貧富に拘らず、世界へのワクチン配布を可及的速やかに進める組織やインフラ整備が必須である”とも付言した。
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6月7日付
『ザ・デイリィ・ワイア』オンラインニュース(2015年設立の保守系メディア)は、「イーロン・マスク氏、やがて中国は“人口崩壊”に見舞われると警告」と題して、このままいくと中国も近い将来人口が40%も激減し、「人口崩壊」に見舞われると警鐘を鳴らしたと報じている。
世界一の大富豪のイーロン・マスク氏は6月6日、中国における出生率が半世紀余りで初めて減少したことを受けて、このままいくと中国の人口は40%も大幅減少し、「人口崩壊」に見舞われると警鐘を鳴らした。
英国『BBC』(1922年開局)の直近の報道によると、中国の統計局の2021年人口統計値の発表で、人口増加が僅か48万人に止まり、出生率も2020年の1.3から1.15に減少していることが判明したという。
『BBC』は、“中国は2016年に一人っ子政策を止め、かつ、昨年に税金やその他補助給付を設けた三子政策を導入したにも拘らず、かかる事態が発生している”と報じた。
恐らく、長い期間の一人っ子政策で、多くの人が小家族性に慣れてしまったばかりか、生活費の大幅増加や、現下の新型コロナウィルス感染症に伴う都市封鎖政策で、子供を増やすことに逡巡したためとみられる。
かかる報道を受けて、マスク氏が6月6日、“多くの人が依然中国で一人っ子政策が継続していると勘違いしている”とした上で、“昨年、三子政策を導入したにも拘らず、出生率が最低値となっており、このままいくと人口が40%も大幅減少し、「人口崩壊」に見舞われることになる”とツイッター上で警告した。
同氏は昨年12月初め、経済紙『ウォールストリート・ジャーナル』(1889年創刊)主催の主要最高経営責任者評議会において、“現代社会が抱えている最大のリスクのひとつは、出生率の低さであり、かつそれが年々ものすごい勢いで低下していることである(参考1後記)”とし、“残念ながら、著名知識人含めて多くの人が、地球上の人口が想定以上に増加していると、今現在のことしか見ておらず、将来に深刻な人口減少に至ることを見落としていることだ”と発言していた。
同氏は、国連が出生率減少を過小評価して人口増加予測(参考2後記)を立てていることについても、“全くナンセンス”だと非難している。
なお、同氏は先月、昨年の日本の人口が64万4千人と記録的な減少を示したことに触れて、“日本がこのまま手をこまねいて、出生率が死亡率を上回るような対策を講じなければ、やがて日本は存在しなくなる”とし、“それは世界にとっても大変深刻な問題だ”と警鐘を鳴らしていた。
(参考1)英国医学雑誌『ランセット』(1823年創刊)等が調査したところによると、1960年代の世界の平均出生率は5.2人であったが、現在は2.4人で、それが2050年には2.2人(人口維持可能なレベル)となり、2100年には1.66人にまで落ち込むと予測されるとする。
(参考2)国連は、人類が次の世紀に入っても急速な拡大を続け、現在の80億人弱から2100年には110億人を超えると予測している。しかし、『ランセット』に掲載された、ワシントン大学の研究者らによる人口統計学的研究報告では、世界の人類は2064年に97億人でピークを迎え、その後減少に転じると予測している。研究者らは「ひとたび人口減少が始まれば、それは恐らく容赦なく続くだろう」と述べている。例えば、今世紀末までに、中国は6億6800万人減少して現在の人口のほぼ半分を失い、インドも2億9000万人減少すると予測している。
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